「フライトライン」世界を驚嘆させた規格外の馬の詳細

2022年サウジカップ

デビュー戦のひと走りで世界を震撼させた規格外の馬、フライトライン。BCクラシックを華麗に勝ち、これ以上証明するものはないと現役生活を閉じました。6戦6勝、天国からセクレタリアートを連れてこないと、この馬に先着できる馬が見あたりません。

世紀の素質馬の呼び声高い、フライトラインの素性、成績、血統、馬体考察から、三冠を走らなかった理由、ラストランをまとめてみました。

フライトラインの基本情報

血統 馬主 厩舎 ベース 成績

生誕・生産牧場: 2018.3.14生 Summer Wind Equine
父母: Tapit-Featherd 5代血統表 
馬主: ウェストポイントサラブレッズ25%所有、ほか4社共同
育成: レーンズエンド
調教師: Jサドラー
ベース: サンタアニタ競馬場
成績: 6戦6勝うちG1 4勝

フライトラインの成績

全レース大差で圧勝

レース名距離・馬場斤量kgタイム着差
2021/4/24未勝利戦サンタアニタ1200mFast53.51:08.7513馬身3/4
9/5一般戦O.C.Aデルマー1200mFast54.01:08.0512馬身3/4
12/26G1マリブSサンタアニタ1400mFast54.51:21.3711馬身半

フライトラインのスピード

区間ラップ

レース名400m800m1200m1400m
2戦目デルマー22.0744.1756.05(1000m)1:08.05(1200m)
※3戦目G1マリブ21.6844.161:08.461:21.27
ちなみに日本の至宝スプリンター、ロードカナロアが2013年に香港スプリントを制したときの400メートルごとのラップは、23.89 46.36 1:08.25でした。
計測方式が違う米国と香港の単純タイム比較はアレですが、歴代の香港スプリントでも800通過は45~46秒台です。44秒台ペースは一度しかなく、当たり前のように43・44秒台でぶっ飛ばす米国ダート競馬のスピードには舌をまきます。
ゴール前の攻防も見応えがありますが、毎回ひとり旅のフライトラインはサラッと流すだけだし、最後の直線の本気の脚を見た者はだれもいません。
※マリブSはトラカス社の一頭ごとのラップです。公式走破タイムとは0.1秒差異がありますが、G1の舞台でもゲートからゴールまで最速かつ馬なりのままでした。
この馬の本気の走りを見てみたいものです。果たして本気をひきだせる相手はいるでしょうか?

G1マリブステークス馬なりで圧勝


相手が弱い疑惑

そうでもない。
3歳馬限定のG1スプリントですが、BCスプリント鼻差2着馬、全勝馬、良血馬とメンバーは悪くありませんでした。
2021年デルマー開催のBCスプリントは800を44.11秒で通過し、終盤ゆるんだ1:08.49で決着。フライトラインは9月に同じコースを同じような馬場状態で1:08.05で走破しました。
BCスプリントの斤量は57.25キロ(3歳牡56)、フライトラインの斤量は54キロです。サドラー調教師はBCスプリント出走を熱望するも、馬主サイドが異をとなえ実現はしませんでした。

前年優勝馬シャルラタンと時計比較

シャルラタンが比較相手なら不足はないでしょう。
2021年サウジカップでミシュリフに惜敗したシャルラタンは、当時の米国ダート最強馬でした。サウジ遠征前にマリブSを走り優勝。下記はレースラップではなく、馬ごとの区間ラップです。
400m800m1200m1400m
シャルラタン21.9344.151:08.541:21.50
フライトライン21.6844.161:08.461:21.27
シャルラタンのマリブSは、韋駄天ナッシュビルがぶっ飛ばっして43秒台で800通過。直線ターンでナッシュビルを抜くときから、スミス騎手の手はガシガシ動きムチも入ってた。
プラ騎手は発後のポジションをとったあとは、お客さんのように座ったままでゴール。それでもフライトラインの走破時計はシャルラタンに勝っています。

サンタアニタ高速馬場説

サンタアニタの1400メートルのレコードは2010年の1:19.70です。フライトラインの時計は平凡に毛が生えた程度に見えます。レコードが出た2010年12月26日は、サンタアニタがオールウェザーからダートトラックへ戻した直後で、スピードが出やすい馬場だったと記録があります。
歴史は繰りかえします。
2019年に馬の事故が多発した原因は、怪しいお薬のやりすぎと降雨で馬場の粘土質が固まるためと特定されたので馬場対処がなされ、2010年より現在のトラックのほうがスピードが出にくくなっています。

一口馬主必見エピソード

アメリカンファラオの半弟Triple Tap

マリブステークスで4着入線したトリプルタップは、フライトラインと縁のある馬です。
フライトラインと同じ牧場生まれのアメリカンファラオの半弟で、バファート厩舎で管理されています。この良血馬も2戦全勝の勢いでマリブSのゲートに立ちました。7番ゲート緑帽の鹿毛の馬です。
フライトラインをみそめたエージェントのインドルゴ氏は、ウェストポイントサラブレッズの代理人を務める方です。
プライベートでとある馬を購入したい顧客の代理として、サマーウインド生産牧場を訪れました。その馬がLittleprincessemma2018、下の画像の馬、のちのトリプルタップです。


馬格があり、トモがしっかりした素晴らしい馬にみえます。
けれども、インドルゴ氏は牧場にいた別の馬にひと目ぼれしてしまいます。
目的の馬はそっちのけで、ひとめ惚れした馬が気になって仕方がないインドルゴ氏。その目に狂いはありませんでした。その馬こそが、マリブSでトリプルタップを18馬身半ぶっちぎったフライトラインでした。
下に同じころのフライトラインの馬体画像があります。馬に出資する皆さんはこっちの馬体を選と幸せになれます。教材にしてください。もちろん私には優劣がわかりません・・

フライトラインの馬体

エージェントを魅了した1歳当時

馬体について見識が深い、さばそん@mickey_cwjさんに印象を語っていただきました。リプを見ていくと
1歳当時のフライトラインが3歳現在どのように成長したかがわかります。
怪物は怪物の馬体で生まれてくるのでしょう。


フライトラインの素質を見抜いたインドルゴ氏は、ウエストポイントサラブレッズを筆頭に共同馬主として5社を組織します。単独で保有するには高すぎる値がつくと、見こしたからです。
2年4ヶ月後、世界を震撼させる馬は2019年8月FasigTiptonサラトガイヤリングセールで100万ドルで落札されました。

なぜダービーを走らなかったか?

大怪我

2歳になった2020年1月、育成中に大きな怪我に見舞われたのが一因です。馬具をつけトレーニングへ出ようとしたそのとき、何かに驚いたフライトラインは馬房扉の留め金にお尻をぶつけ、大きな裂傷を負いました。これで育成が大幅に遅れ、3歳春までデビューを待つことになりました。

フライトラインの2022年ローテ

サドラー調教師の発言

2022年は4つのレースに出走させる予定。ほぼ確定事項として、6月11日ベルモント開催のメトロポリタンマイル。次走は3月5日サンタアニタ開催のSan Carlos Stakes(G2)1400メートルになろうと発表がありましたが、後肢の飛節に軽い異常がみつかり次走は白紙にもどりました。
メットマイルの後は、年末までに2走を消化します。最終レースはBCクラシックになろうと発言しています。

G1Metmile

馬場:ベルモントパーク1600m Fast
勝利時計:1:33.59
斤量:ハンデ戦 勝馬は56.2 2着55.3 3着56.6


走破時計0~400m80012001600
1:33.5922.7822.2323.5825.07
ライバル視されているライフイズグッドが、3歳秋に2021年9月に同じベルモントのG2マイルを走ったさいのラップです。馬場状態は同じくFast。
1:33.9523.0523.0323.7824.09
フライトラインの斤量は56.2キロ、ライフイズグッドが54キロ。トラックと馬場状態は同じ。相手関係や展開もあるでしょうが、発走からゴールまでの平均スピードは、フライトラインが63.25km/h、ライフイズグッドが62.4km/h。この2頭が直接対決したら、勝利する可能性が高いのはフライトラインです。

引退レース

2022年BCクラシック優勝

キーンランド競馬場:2000m fast
斤量:57kg
走破時計:2:00.05


叩きあった2頭の区間ラップ

400m800120016002000
Flightline22.4923.4623.5525.2025.59
Life is Good5着22.4223.2623.5225.5427.53
レース後談話によると、ライフイズグッドの鞍上Iオルティス騎手は大差で先行し逃げ残る戦法をとりました。
最初の800メートル通過は45.68秒。1周間前の天皇賞で800を46.0秒で通過したパンサラッサより2馬身前を走っている感覚です。3着入線したテイバのMスミス騎手は、逃げた2頭のペースを自爆走と表現しました。もちろん追いかけたりしませんでした。
ぶっ飛ばしてフライトラインを置き去りにしたかったオルティス騎手が直線手前でふり返ったとき、フライトラインは直ぐ後ろにおり、オーマイガー、軽く自分を抜き去ったと証言しています。
普通なら47秒くらいで走り抜けて行く区間を狂ったように激走すれば、終盤で垂れるのが正しいレースのあり方です。ライフイズグッドは直線で力尽き5着でフィニッシュ。
フライトラインはいとも涼しげに、彼のラストランを平均時速61.3kmで走り抜き、ラスト400も馬なりで25秒台をキープして優勝しました。これ絶対ありえない!せめて26秒台に落ちてほしかったと思うくらいありえないスタミナです。ちょっと心肺のレントゲン写真見せてほしいですね。
フライトラインの産駒は、並外れた身体能力を受け継ぐでしょうか?

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