マキシマムセキュリティ【米国ドーピング事件】波乱万丈の馬

サウジカップ

2020年2月29日、マキシマムセキュリティーはサウジカップを制し世界一の馬になりました。

見事な馬体が繰りだすスピードと強さ、驚異的なスタミナを見せつけた、世界王者の誕生です。
このとき、10日後に起こる事件を予見できた人がいたでしょうか?
FBIの捜査官たちが、冷ややかに眺めたかもしれません。捜査は、最終段階まで煮詰まっていました。
3月9日の午前4時
FBI捜査官が、フロリダのガルフストリームパーク内の2厩舎を強制捜査。サーヴィス調教師とナバロ調教師ほか、違法ドーピングに関与した人物を逮捕し、証拠品を押収しました。
全米史上最大のドーピング事件が機密情報の殻をやぶり、全世界へ発信された瞬間です。

マキシマムセキュリティは世界王者から一転、汚れた馬になりました

ドーピング事件に関与した27人が逮捕・起訴され、3月23日の初公判を前に取り調べが行われています。
米連邦検察の起訴状をベースに、マキシマムセキュリティとサーヴィス調教師を焦点をあて事件をまとめていきます。

サーヴィス調教師違法ドーピングで逮捕・起訴

米連邦検察の起訴状によると、サーヴィス調教と関与した獣医2名、調教助手の容疑は

2018年から2020年2月までに

  • FDA(アメリカ食品医薬品局)が認可していないSGF-1000を、ドーピング目的で全管理馬に投与した
  • 連邦・州当局、レース主催者、馬券購入者にかくれて、各地の遠征先で使用
  • 処方箋や請求書を偽造
製造や販売と実際の処方には、巧妙かつ組織的な手法が使われています。

マキシマムセキュリティーにSGF-1000をドーピング

サーヴィス調教師が好んで使い、ナバロ調教師にもすすめたSGF-1000を製造販売していたのは、ケンタッキー州のTailor Made Compoundingです。
登録も許可も得ていない闇会社で、セールス部門の責任者が逮捕・起訴されました。
カリフォルニアクロームが種牡馬入りした生産牧場Taylor Made Farmとはまったくの無関係です。悪者が信頼や箔づけのために、似たような名称をつけたのでしょう。
起訴状によると

SGF-1000は、線維芽細胞や肝細胞を増やし細胞組織の再生をはやめるドーピング剤で、本来の能力以上に、馬のスタミナや持久力を増大させる

とあります

2019年3月8日のサーヴィス調教師とナバロ調教師のSGF-1000に関する電話でのやりとりがFBIに盗聴、記録されています。

I’ve been using it(SGF-1000) on everything almost

「俺は、ほとんど全馬に使ってる」とサーヴィスがもちかけると

Jay we’ll sit down and talk about this shit.I don’t want talk about this shit on the phone ok

ナバロが「ジェイじかに話そう。電話じゃこのク◯の話したくないんだ」と遮っています。

2019年5月8日付の資料には、サーヴィス調教師がレース出走馬のドーピング用に、処方箋なしでクレンブテロールを手に入れた様子が記録されています。
グレンブテロールはFDAに認可された、気管支炎治療薬です。ドーピングに悪用されると
  • 筋肉が発達し体重が増加
  • そのぶん骨が減る
  • 気管支が広がり呼吸がらくになる
  • スタミナと持久力が増し、速く長く走れる

心臓発作や脚の骨折、馬のうつ病リスクが跳ねあがる

治療目的外の使用は禁止されています。こんな恐ろしい薬をシロップにまぜて飲ませたサーヴィス調教師は、ホースマン失格以前に人間もやめたのでしょう。
ちなみに、サーヴィス容疑者の管理馬からは、過去10年間に8回クレンブテロールの陽性反応が出ています。いずれもレース後の検査で反応が出た確信犯です。

サーヴィス調教師の成績ビフォーアフター

この調教師は、2018から2020年まで容疑のドーピング剤を使用したとされています。
殿堂入りのレジェンド調教師でも勝率20%がやっとこなのに、30%近い勝率はどう見ても不自然です。
1勝あたりの獲得賞金も増えました。より難しいレースに出走させ、勝率を上げたことを意味しています。
出走回数 勝率 複勝率 賞金
2020年 92 22% 63% $1,201,827
2019年 574 29% 66% $11,089,040
2018年 441 32% 65% $7,577,894
2017年 391 29% 60% $4,967,662
2016年 364 27% 60% $3,417,318

容疑期間中のマキシマムセキュリティーの成績

生産牧場
2016.5.14生  Gary & Mary West Stables
NEW YEAR’S DAY ※北海道の社台SSで繋養中
LIL INDY
2018年12月20日ガルフストリームパークの新馬戦でデビューし、10戦8勝。3勝がG1です。2019年6月ペガサスSでの2着と、降着されたケンタッキーダービーのみが黒星です。
デビューからサウジカップに至るまで、調教師がドーピングに手を染めた期間と重なります。
サウジカップで2着になったミッドナイトビズーや、過去に負けた馬の馬主たちが、マキシマムセキュリティーの降着を要求してるよ
彼が降着されるかどうかは、ドーピング検査の結果や裁判の進展を待たなければなりません。

マキシマムセキュリティーのその後

サウジアラビアから帰国

タイトな日程を理由に、ドバイワールドカップを回避し帰国したマキシマムセキュリティは、アーリントン競馬場の検疫施設にはいりました。3月13日までの入国検疫です。
検疫が明けると、馬はケンタッキーへ送られました。高名なブラムレージ獣医師のもとで、体の隅々までメディカルチェックを受けます。体を休めた後、新しいトレーナー・バファート師のもとへ送られました。
転厩後は環境変化でナーバスになったのか、食欲が進まず心配されましたが、すっかり元気を取り戻しレースに復帰しました。

国内復帰戦

8/22日のG1で帰国後2勝目を飾りそうです。最大目標は11月のBCクラシックです。あと1戦挟むかどうか、どこへ行くかはまだ未定。

レース名 距離・斤量 着順 走破タイム
San Diego Handicap-G2 1700m・57キロ 1 1:44.54
Pacific Classic-G1 2000m・56.2キロ
未定
BC Classic-G1 2000m

サウジッカップの着順と賞金はどうなる?

マキシマムセキュリティーを除く全対象馬に賞金振り込み

2020年8月10日JCSAの発表全文や報道資料によると

米国当局の調査が完結し結果が発表されるまで、優勝馬マキシマムセキュリティへの賞金授与は保留する。サウジカップ開催の日より6ヶ月遡った日以降にPEDことドーピング薬物の使用が明らかになった場合、同馬は失格とし賞金対象外とする。
いっぽうで、ポーリックリポートによると、マキシマムセキュリティの生体試料は、パリの検査施設へ送られました。
提出されたのは体毛・尿・血液で、サウジアラビアへ出発前とサウジカップ直後に採取されたサンプルです。目的はSGF-1000および他の物質の検出です。馬主側の声明によると、パリだけでなく香港の検査ラボにも提出された模様です。
両施設の検査では陽性反応が出なかったのか、コロナ禍で遅れているのかは不明ですが、JCSAの発表をうけオーナーサイドもすかさず声明文をリリースしました。

馬主の生産牧場とクールモアは異議を唱える

「サウジアラビアジョッキークラブは透明性と公正を心がけ、行った検査内容と結果を公にすべき。賞金はよ渡せ」って反論してる
馬主側の声明内容は、
米国・欧州・オセアニア・日本・香港・ドバイではレース後に薬物検査を行い、違反があれば失格になる。これが国際レーシングのスタンダード基準です。
マキシマムセキュリティの生体試料を検査した、パリと香港のラボで陽性反応がでていれば、とっくの昔に失格にされたことでしょう。
それに米国の起訴状にある同馬へのPED投与疑惑の期間中に、マキシマムセキュリティは2度出走しています。2度とも検査の結果は陰性で、禁止薬物はでませんでした。
JCSA総裁のバンダール殿下は馬主の心情を慮りつつ、米国司法当局の調査内容が明らかになるまで本件について言及はないとコメントしています。

目指せBCクラシック優勝

春にケンタッキーダービーで降着最下位、秋には疝痛を発症してのたうち回り、マキシマムセキュリティは死の淵をさまよいました。
今回のドーピング事件といい、サウジカップ失格の可能性といい、波乱がつきまといます。

馬房でのんびりマックス君♪


この馬には何の罪もありません。

自分からドーピング注射をせがんだわけでもなく、重大事件の主役になってることも理解していないでしょう。
なすがままに危険な注射を打たれ、見知らぬ場所に連れられて全力疾走を求められる馬生です。生命を脅かす調教師に褒められ、撫でられたときは喜んだかも知れません。
強欲な人間たちに汚された馬体も清められました。
秋のBCクラシックで、ドーピングなんかしなくても世界一速いんだと、ドヤ顔するマキシマムセキュリティを見たいと切に思います。
ちなみに陣営は、マキシマムセキュリティの適正距離は2000mと答えています。BCで勝って、もう一度サウジカップを走ってもらいたいですね。



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